良いミックスを作る方法~ミックスを始める前に~

 良いミックスにしたいという願いはDAWで曲を作る人なら誰しも持っている欲だと思います。
 しかし、実際にミックスを行っていると、これは曲が悪いのかそれともミックスが悪いのか解らなくなっていき、困り果てる人も多いのではないでしょうか。

 さて、良いミックスを作っていきたいと思いますが、そもそも「良いミックス」とは何かをまず定義付ける必要があります。
 こうすると様々な主張が飛び交うことが予想されますが、誰しもが目指すものは「良い音楽に聴こえるミックス」になるかと考えます。

 さて!!「良い音楽に聴こえるミックス」とは何でしょうか。これは先ほどとは比べ物にならないほどの沢山の意見が出るはずなので少々怖い部分があるのですが、如何なるジャンルであろうとも「良い音楽に聴こえるミックス」はある意味「奇麗な音楽(またはミックス)」ではないでしょうか。私はそう考えています。
音楽表現上「汚い物」であってもそれは「奇麗」に整えられたものであることが常なので恐らく殆どの場合に当てはまる答えの一つだと思います。

さらに深く掘り下げる

 では奇麗な音楽(ミックス)を作るにはどうすればよいでしょうか。
 奇麗を定義付ける必要性を感じますよね!
 しかしここから難しくなり、この楽器のEQはこんな感じ~、ディレイはこうで、コンプはこう。あの楽器はここに配置して~等、途端にごちゃごちゃしだします。
 書店で売ってるミックス関係の本もその傾向が強いですね。
 これらは特に間違いではないのですが、木を見て森を見ずという状況に大変陥りやすい罠だと思います。

 方法なんて何でもいいんですよ、奇麗になればおっけーです!
 書店にある本やネットの小言は偶々その場では良い解だったということです。

奇麗なミックスって?

 んじゃ奇麗なミックスって何だよって話なのですが、これは身の回りにあふれてるご自身が好きな音楽(曲)が答えになります。
 聴いていて心地よいな、良い感じに聞こえるなと思える作品があればそれはもうご自身専用の「奇麗なミックス」の手本です。

 後は如何にしてお手本に近づいていくかという段階に入りますが、ここでお手本の真似をする為に書籍に乗っているような所謂小技を使っていきます。
 しかし、小技は所詮小技にすぎません。自分の曲と反している方法ならばそれはただの毒です…

結局どうすれば?

 ではどうすればよいかという話になってきますが、まずお手本の曲を解析する所から始めます。
 解析となるとアナライザープラグイン並びに類似の機能があるソフトウェアが必要になってきますが、とにかくこの段階で必要なのは、音の定位各周波数の大きさが解るものです。

解析1

 まず単純に参考曲の波形を見ましょう。

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iZotope RX7で波形を表示した図

 この波形の図から読み取るものはダイナミクス(音量増減の変化量)とピーク時の音量です。
 好きな曲がどのぐらい音量変化しているかの確認と最大でどこまで大きな音量が成っているのかを知るのは重要な情報となります。
 そしてこれらは数値化して見れるので簡単に真似することが出来ますね。それ以上大きく(小さく)しないようにすればいいわけですから。
 この時、ピーク時の音量について気を付けます。
 ネット上から拾った音源やyoutubeなどで再生されている曲たちは総じてサイト側のノーマライズ処理がかけられている為本来の音量と異なることがあります。
 もちろん、それを踏まえてのミックスが欲しい、また好きな場合は問題ありません。

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RX7の場合、自動ですべての数値を表示してくれます。

 奇麗なミックスがなされてる曲はこの時点で美しい波形を持っています。

解析2

 次は参考曲の音が鳴っている定位です。
 音の定位と言えばどの楽器がどこで鳴っているかという点に着目しがちですが、ここでは参考曲がどの程度まで定位を広く使ってているか。という所を見ます。
 もしかしたら想像以上に広くとっていたり、はたまた狭くとっているかもしれません。

 全体としてどの程度広く使っているか確認が出来たら、次にどの音域(周波数帯)がどのような位置で鳴っているか確認できるとより良いですね!

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Ozone8のimagerはアナライズプラグインではないが定位が解りやすく修正もその場でできる
解析3

 最後にスペクトルアナライザによる各周波数帯域の音の大きさ(強さ)です。
 これは上記に書いた解析結果よりも慎重に見ていく必要があります。
 スペクトルアナライザは各社から様々なプラグイン、ソフトウェアが出ていますが、グラフィカルなものではなく解析としてのニーズに答えられるソフトが必要になります。
 よくあるスペクトルアナライザが表示されたEQやコンプなどありますが、あれは解析用としては機能不足でありFFTを調整できるものを使用します。
FFTというのは高速フーリエ変換という代物なのですが、ここでは周波数分解能として捉えていれば過不足なく問題ありません。
 さてこれで何を見るかというと各周波数帯域の相対関係です。
 例えばリッチで良い環境で聞かれる前提である映画音楽は顕著に解りやすく、低音域から高音域にかけて緩やかにカーブを描いています。

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某有名な宇宙を舞台にした壮絶な親子物語EP9の冒頭曲全体をRX7で解析した物

 このカーブが非常に大事になってきます。0.5dbでも違えば別のミックスになるといっても過言じゃありません。
 全体の状態を見た後は細かく無作為に1sample単位で見ていきます。

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これは冒頭にある世界一有名なBbメジャーコード

 ピークを点で結ぶと奇麗なカーブを描いてますね!

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遥か昔に作った曲のBbマイナーコードがなった時のサンプル

 こちらも似たような状況で同じような音域が成るシーンですが、高音域のカーブが弱く高い音が残っており上の有名曲と比べ、がなり立てたような状態になっていることが解ります。
 また低、中音域でもバラツキのあるピークを持っていることが確認できます。
※16000Hz付近で突如崖が出来ているのはmp3の圧縮関係です。

 このsample単位の解析は様々なところを見て特徴を掴んでください。
 するとこの部分は飛び出しているor引っ込んでいるというのが解るようになり自身のミックスで崩れている部分が視覚的に把握できるようになります。
 この比較は大変便利なプラグインが出ており、iZotopeのTonal Balance Controlを使えばわざわざ書き出さなくても簡単に比較することが出来ます。

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目標の曲ファイルを読み込ませて比較することも可能

 解析3が慣れると他人のミックス感覚をコピーしやすくなります。
 またより曲に合ったミックスにもしやすくなります。

ミックスのための下準備終了

 以上で解析は終わりです。全体として自身の好みを知り何が手本と違うのかを見比べ修正していくわけですので大変地道な作業です。
 しかし、大変便利なツールが世の中には溢れているので各解析のように活用していきたいですね!

 こうして参考曲がどのような状態であるかを把握することによって次のステップへ進むことが出来ます。

 何故この3つの解析をしないと次のステップに進めないかというと、環境依存によるバランスの違いから抜け出
す必要性がある為です。

 例えば今ヘッドフォンを使い曲を作っている人はどうしてもそのヘッドフォンで良い感じに聞こえるバランスにしがちです。
 ヘッドフォンというのは全ての音が満遍なくそれらしく聞こえる為あたかも全てのバランスが良い様に聞こえるので崩れたバランスになりやすい為です。
 スピーカーの場合も価格帯や部屋によってバランスが変わるので実は崩れていても気づきにくい場合があります。
 しかし上記解析はお手本を元にミックスを行う下準備なので環境依存の問題点を洗い出しやすく、どのような場所でも安定したバランスを生み出しやすくなります。
 ここからはそれぞれのジャンルで違う技法を使ったり工夫を凝らしていくので専門書や誰かに聞くと良いかもしれません。
 これらが少しでも参考になれば嬉しいです。



 人によっては大変初歩的な内容ではあるかもしれませんが、あまり言及されたり書かれたりしない事柄なので書きました。
 不明点などありましたらツイッターなりコメントなり書いてもらえれば反応すると思います。